前回と同じ運転手さんのお話です。これまた同じく横断歩道編で、違うパターン。前回は男気のあるお客さんでしたが、こちらは人間の屑です。

 お客は行き先を告げると、何時までに行かなければならない。とにかく急いでくれ。遅れたら会社を首になる、とまで言います。そんなこと、あるかーい、と突っ込みたくなりますが、運転手さんはできません。お客様は神様です、から(古いか、知らないかなあ)

 すると例の横断歩道です。またしてもタイミングは通過できるのですが、通行人が横断歩道内に入っています。道交法が改正されたので走ってしまえば捕まるかもしれない。しかし後ろから「急いでくれ」の声。運転手さんは仕方なく発進します。

 やはり運のない人なんですね。やっぱり捕まってしまいます。前回は「俺が行けと言ったんだから、運転手さんは悪くない。俺の責任だ」と言ってくれた男気のあるお客さんでしたね。

 今回の客は黙り込んでいます。僕は関係ないねと、そっぽを向いています。運転手さんは警察官に事情を説明し、後ろから付いて来るよう頼みます。パトカーを先導する形で無事、時間内に目的地へお客さんを届けることができました。

 その車中、無責任この上ない客は、約束の先方に電話をしていました。すると「遅れても構いませんよ」との答え。首になるんじゃないのかーい! と叫びたくなりませんか。運転手さんは、嫌味の一言も漏らさず、糞野郎を下ろしたそうです。

 後日、社内でドライビングレコーダーのチェックを上司がしたところ、一部始終が分かります。上司は運転手さんに「男だねえ、立派だねえ。なかなかできることじゃないよ」とお褒めの言葉をくださったそうです。

 「でも、減点は返ってきません。それがやっぱり痛いんです」と男気溢れる運転手さんは嘆いていました。いや、絶対に、いいことあります! それでなければ、神様はどこにいるか。ね!

 お客に目を向けると、悲しくて悔しい話ですが、運転手さんに視点を向ければ、いいお話です。では、また。ペレレイ、ペレレイ。