異界はどこにある?

「別世界」とか「異次元」とか言えば、日常的にスゴイ世界という感じだけど、異界というと魔界的な神秘的な感じがしますね。

村上春樹の本を読んでいたら、おもしろい話が出てきました。人前に出ることが苦手な村上さんが何年かに1度、メールで読者と交わしている質疑応答を収録した「村上さんのところ」(新潮社)です。

96ページから97ページにかけて、異界に対する考えを尋ねられた村上さんの答えです。ちょっと長いけど、その部分を引用させていただきます。

 

『▼僕が小説を書くときに訪れる場所は、僕自身の内部に存在している場所です。それをとりあえず「異界」と呼ぶこともあります。それは現実に僕が生きているこの地表の世界とは、また別な世界です。普通の人は夢を見るときに、しばしばそこを訪れます。僕は―—というか物語を語るものはと言っていいのでしょうが——そこを目覚めた意識のまま訪れます。そしてその世界について描写します。だからそれは外部にある「異界」ではありません。あくまで内的な「異界」です。異界という言い方が誤解を招くなら、「深層意識」と言ってもいいかもしれません(ちょっとだけ違うんですが)。どうすればそこにアクセスできるか? 僕にはわかりません。瞑想の訓練みたいなものである程度可能になるかもしれませんが、妙な思想がからんでくると危険なこともありますので、くれぐれも気をつけてくださいね。マジックにはホワイト・マジックとブラック・マジックがあります。違いに留意してください』(村上春樹「村上さんのところ」新潮社)

 

驚きの文章でしょう。伊藤惠理がやっていることと言っていることと似通っていませんか。ヒプノセラピーは催眠で潜在意識に入り込み、顕在意識ではわかっていない問題を導き出す方法ですよね。ちょっと言葉は違うけど深層と潜在はかけ離れてはいないと思います。妙な思想は、たぶん宗教的なことでしょう。ホワイト・マジックとブラック・マジックも何やら白魔女と黒魔女を彷彿とさせます。

やっぱり村上さんは、伊藤惠理の表現で言えば「宇宙系の魂」なんですね。なにしろファンであるヤクルト・スワローズの試合を神宮球場で観ていたある日、外国人選手のヒルトンが左翼線に二塁打を打ったのを見たとき「小説家になろう」と思ったそうです。

「1Q84」は2つの月がある異界? と現実が錯綜した世界観に満ちた小説です。「海辺のカフカ」は空から魚が降ってきますからね。ほかの小説でも、井戸がで出てきて異界につながっていたりします。ひとつ間違えるとただの出鱈目になるんですけど、文章力や構成力のためか説得力があるんです。リアルな宇宙小説ですね。

 

で、異界は自分の中にあるそうです。夢もそうなんですね。僕も今から、ちょっと自分の中の異界へ遊びに行ってきます。では、また。  IMG_0321

飛びます、飛びます! (異界のマリン)

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